数打ちゃ当たる、占いとか



「基本的には占いは信じない性質なんだよね。」
 俺が何気なく水谷に貰った占い雑誌を広げていると、隣りで昼のあまりだと思われる水を手にした西広が言う。
「マジで?」
「え、何、信じてるの?」
 妹がいておっとりした性格で、意外と女子と仲の良い西広のことだから、占いとか結構信じてる方だと勝手に決め付けていた分驚いた。
「全然。」
 無論、俺だって信じてるわけじゃない、こんなもの。ただ、今日お前すっごく運勢いいんだぜって無理矢理水谷がくれたから、じゃあ試しに読んでみようかって具合で見ているだけだ。
 確かに今日は何でもかんでも上手くいくとかってことが書いてある。ほんとかよ。
「あー、それ水谷の?」
「……うん。今日は俺、運勢良いらしい。」
「へーえ。」
「何?」
「嬉しそう。」
「……。」
 最近慣れてきたせいか、西広は時々核心を突くようなことをさらりと言う。長男である為なのか、人の心の変化を察知するのが上手いのだ。本人いわくそんなことないよっていうけど、半分は誉め言葉じゃない。
 だって言い当てられたくないことをあの笑顔付きでさらりと言われてみようよ。多少は胡散臭さを感じずにはいられなくなるから。
「部活行こう、部活。」
 居たたまれなくなった俺は、雑誌を無理矢理バッグに詰め込み立ち上がる。でも、西広はまだニヤニヤしている。
「何だよ。」
「いや、別に。いこう、部活。」
 立ち上がり、自分の席に荷物を取りに行く後姿を見て、俺は思った。
 さっさと部室に行って早急にこの雑誌をお取り引き頂こう。そして、今日一番運勢の悪い水谷の星座をマーカーでぐるぐる囲ってやろう、と。



「これ、ありがとな。」
「どういたしまして。」
 すっげー笑顔でこの雑誌を渡すもんだから、沖の奴なんか良いことでもあったのかと思ったらこれかよ!
 善意でいいこと教えてやったのにその仕打ちがこれ? つーかこれ、篠岡のなんだけどどうしよう?
「水谷くーん。」
 やべ、篠岡だ。
 慌てて後ろへ隠したけど、気付かれてないだろうか。
「それ朝渡した雑誌?」
 早速気付かれてたのか……。隠した意味ねえ……。
「水谷くん、運勢最悪だったね。」
「え、俺の星座、知って……。」
「散々自分で言いふらしてんだからみんな知ってんに決まってんだろ。」
 トンボをかけながら通りすがりの阿部が言う。良かった、目の前から聞こえたんじゃなくて。阿部はいつだって酷いけど、この言葉を篠岡から言われたら俺はどうしたらいいのか分からない。
 ふいに篠岡が笑った。
「ふふ、大丈夫だよ、ちゃんとみんな誕生日にはお祝いしてくれるよ。」
 そういう問題では、ないんだけどな。ああ、やっぱり。
「……やっぱり今日はついてない。」
 心の中の呟きが思わず声になって出た。
 何だか、慰めて欲しいみたいで嫌だ。篠岡に慰めてもらえるんなら嘘じゃないけど、そう解釈はして欲しくない。
「あ、そうだ。水谷くんこれから時間空いてる?」
「いや、え、うん、空いてなくないけど。」
「今日上がり早いし、何か食べてかない?」
「うん、……え!?」
 衝撃は遅れてやってきた。
「あ、やっぱり駄目だった?」
「ぜんぜん! 全然駄目じゃない! え、マジ、良いの???」
「うん、何だかその雑誌でちょっとあれだったかなって……。」
 篠岡は正直だ。期待していい意味のそれじゃなくて、彼女なりの気づかいだと思う。
「いやー、俺もお腹空きまくってたんだよね。行こう行こう!」
「じゃあ、片付け終わったら、校門で。」
「了解!」
 占いとか、別に信じる方じゃないんだけど、この雑誌見て若干気落ちしてたのは嘘じゃない。
 でも、何事も予測通りに行かないのは当たり前で、結果オーライというのも違う気がする。
 後は、話を聞きつけた他の奴らが校門で待ってた、何てことにならないように、それだけは祈っておこう。




 試合の前とかはどんな些細なことでも気にはするのかな? 占い。
 残念ながら栄口に割り込まれます。


2005.9頃
ブラウザバックでお願いします