椅子を並べて



 授業終了の鐘と同時に教室は喧騒を取り戻す。
 待ってましたとばかりに教室を飛び出し購買部へ向かう者、ガタガタと机をくっつけてグループを作る者、他のクラスの友達の下へ荷物を持って向かう者。見慣れた昼食時の光景だ。
 このクラスの住人である沖は、いつも友達と数人でクラスの真ん中より少し後ろを陣取り、弁当箱を突付いている。ただ、今日がいつもと少し違うのは、その仲間内から外れて一人席を動かない彼の隣に千代がいることだった。
 同じ部活の仲間ということもあってか、からかう者は誰もいない。おそらく部に関する打合せをしていると思われているのだろう。
 実際に、二人の前には一冊のノートが広げられている。
 千代の弁当箱は他の女子と比べて割と大きい。中身もそれなりに詰まっていて、バランスを考えた内容になっている。もちろん沖の持参する弁当箱とは比にならないが、それでも女子らしく綺麗な配置がなされている。
「でね、この日だと午後からサッカー部がグラウンドを使うから、あんまり皆が出たり入ったりするとすぐばれちゃうと思うのね。ほら、栄口くんって察しが早いでしょ?」
 箸を脇において千代がノートに上に置かれたスケジュール帳をとんとんと叩いた。
 成り行きでという前提があったにしろ、わが部のエースである三橋の誕生会が開かれたことを後日知った彼女が、少し寂しそうに笑って良かったねと言っていたことを思い出す。日にちは知っていたが、やはり仲間として共に祝いたかったというのがあったのかもしれない。
 だからなのだと思う。三橋の次に誕生日がやってくるのは副将の栄口。その誕生会をみんなでやりませんか?と、はにかみながら千代が提案したのは2,3日前のことだった。
「そうだね、なるたけ固まって練習する日は避けた方がいいかもね。」
「それでその次でこの日なら、家庭科室使っても平気な日なの。休日なんだけど他の部の練習とかぶらないし夕方空くし。」
「それモモカンには言った?」
「まだ。花井くん達に話してオッケーだったら許可貰いに行くつもり。」
 みんなで集まって話し合いをしてもいいのだが、それでは本人にばれてしまうと思ってか、千代は同じクラスである沖に相談を持ちかけてくる。栄口は勘が良いというか察しがいいので、自分以外のところで打ち合わせがなされていると知ればおおよそ気付いてしまうに違いなかった。
「じゃあそれで良いんじゃない? そろそろこれ片付けないと、本人が来ても言い訳しようがないし。」
 周りを見渡すと、昼食を終えた生徒がそれぞれに動き始めているところだった。千代の弁当箱の中身はほとんど手付かずで、沖はもう食べ終えるところだ。
「わっ 時間なくなっちゃう。」
 慌ててペンを箸に持ち替えた千代を、沖は苦笑して眺めた。それだけ真剣に考えていたということなのだろうが、それと同時に、他の女子よりも多い昼食を残りの時間で食べ終えれるのだろうかと心配にもなる。
「楽しみだね。」
「ん?」
「栄口の誕生日。」
「うん!」
 黄色い卵焼きを頬張りながら、千代はいつもの笑顔で答えた。
 ここまで想われる栄口は幸せだなと思いつつ、その次にやってくる沖の誕生日の時は果たして誰に相談するのか、一抹の不安を覚えながら沖は紙パックのお茶をずるずるとすすった。



公式にクラス設定が出る前は、沖千代は同じクラスだよ!!っつーかわいそうな妄想をしておりました。夢破れた後は家が同じ方角妄想に切り替えたのに、直後反対方向であることが判明……。
ちよたんは、たくさん体を動かす分食べる量も多いかと思ってみた。


2005.4頃
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