君の名前


「か……かず、とし……くん」
「れ……れんくん?」
 ようやく心に決めて相手の名前を呼んだ数秒後、二人はどうしようもないくらいの羞恥心が、全身を駆け巡るのをまじまじと感じた。
 お互いを名前で呼んでみようなんて、どちらが言い出したかそんなことはもうどうでも良くて、ただお互いを直視出来ずに顔を背けることにしか意識が回らなかった。
「や、やっぱやめよ! 恥ずかし過ぎる!!」
「う、あ……ん、沖くん顔、真っ赤……」
「それはお前もだろお!?」
 堪らずに根を上げた沖に同調した三橋だったが、余計な一言をつけてしまったがために、目の前の相手の顔が可哀想なくらい真っ赤になってしまっていた。
 別に普通の友達同士であれば、こんな名前で呼び合うなんてどうってことはないのだ。
 それが普通の、トモダチ、であるのならば。
 群馬にいた頃は、お互いを下の名前やあだ名で呼ぶなんて事は、平気だったはずだ。
「……かずちゃん」
「ひっ……!!」
「ごめんっ、……ちょっと、叶くん思い出して」
 あまりのびくつき方に、三橋はすまなそうに肩をすくめて相手を見つめた。
 お互い名前呼びを試してみたわけだが、やはり自分たちには合わないような気がする。
 それを伝えたら怒られるだろうか?
「三橋」
「ん、なに? 沖くん」
「三橋」
「沖くん?」
 ようやくこちらに目線を合わせた沖の目を見て、言わんとしていることが何となく読み取れて三橋は嬉しくなる。
 きっとこれが、意思の疎通って奴なのだ。
「……やっぱりこっちの方が良い」
「ん、オレもそう、思うよ!」
 他と同じでもつまらないし、何かが違うって思えた。
 その感情を大事にとって、僕らはまた歩いていける。



拍手お礼小話だった三沖。
二人の周りには花はもちろん羽が飛んでいると思います。


2009.11


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