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甘いお菓子 甘党の水谷に付き合って、ハロウィン限定のケーキを買いに野球部数人と店に立ち寄った時、沖はその可愛らしさとたっぷりのクリームに釣られてケーキを一つ購入してしまった。 小さいものだったが一人で食べきるには少々無理で、会計を済ませて袋を受け取った時に思わず後悔してしまったのだが、阿部と分け合えば期限までに処理できるだろうと高を括っていた。 の、だが。 「た、食べ物を粗末にしちゃいけないって教わんなかった?」 両親も弟も母親の実家に出掛けているからと、久しぶりに阿部の部屋にあがりこんだ沖はそこで、阿部が余り甘いものは好んで食べないということを知ったのだった。 それならここで切り分けて自分だけ食べ、残りは冷蔵庫に入れさせてもらって保存すれば良い。その考えを阿部に伝えて皿とフォークを借り食べ始めたまでは良かったのだ。 沖がケーキを頬張る横で雑誌を読んでいた阿部は、何を思ったのか突然、生クリームを掬ってそれを首筋に擦り付けた。 その行為に驚いて持っていたフォークを机に落とすと、子供の頃祖母から教わった言葉を思わず口走っていたのだった。 「知ってる」 「じゃあ、こんなことやめて普通に食べようよ」 だから? とでも言いたげな表情で淡々と言葉を返す阿部は、またもう一掬いクリームを指に取る。それを視界に捉えながら、首に付いたクリームをティッシュで拭うと、ごみ箱へ近づくふりをしながら距離を置いた。 先程の突然の行為があったので身構えていたが、阿部は指に掬ったクリームを眺めるだけで、再びこちらに近づく気配はない。 ただ沖をちらりと横目で見ると、眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情をするだけだ。 「……お前はこれ全部食い切れる自信あんの?」 「え……っと、それは」 咎めるような質問に、沖は思わず口篭ってしまう。 確かに雰囲気に乗せられて買ってしまったとはいえ、このケーキを一人で食べきれる自信はない。 そもそも阿部も食べるだろうと言う考えが前提にあったのだし、残りは冷蔵庫へと言うことは話してあるのだから、今更そんなことを言われても沖も困ってしまう。 「オレは甘いものが苦手、お前は好きだけど全部は食えない」 「それがどうしたっての」 「どっちにしろ無駄になるんだったら、有効活用しようぜって話」 阿部の言う有効活用の意味を図れず首をかしげていると、その隙を突いて彼はこちらとの距離を詰めてきた。 驚く暇はなく、あっという間にシャツを下着ごとめくりあげられると外気に晒された腹に、先程掬ったクリームを擦り付ける。そしてそのままクリームを舌先で舐めとった。 「お前あたまおかしいんじゃないの!? 残った分は冷蔵庫に入れときゃ良いだろ!」 阿部は捲ったシャツの先を持ったまま、沖はそのシャツを戻そうと引っ張るため服におかしな皺が寄る。 クリームを舐めた時に少しだけ舌先が皮膚にあたり、そこがじんじんと甘く疼いた。 「だけどオレは食べねえんだよ?」 「オレが食べるよ」 顔を上げて不機嫌さはそのままに文句を言う阿部の頭を引っぱたいてやりたい衝動に駆られた。 「お前一人だけ美味しい思いして、オレにそれを指くわえて見てろっての?」 「だったら阿部だって、なんか食べれるの買えば良かったんだ!」 もっともらしく言ってはいるが、それはただの言い訳に過ぎず阿部はまだまだこの行為を続けたいと言うのが読み取れてしまって、沖は口を尖らせた。 あのあと沖がこの部屋へ立ち寄ることは既に約束して決まっていたことだし、ケーキを買うことだって見て分かっていたはずだし、一人食べれず嫌な思いをするのなら初めから対処すればよかったのだ。 それをせずに今更こんなことをされても困る。 「別に……オレだって全然食えないわけじゃねんだけど」 もう一度反論してやろうと沖が口を開いた時、阿部は机の足を引っ張って近くまで寄せ、皿の上に乗ったケーキを今度は手で鷲づかみにした。 「なにを……う、あっ?」 そして力を強めて再びシャツを捲くって手にしたそれを擦り付けると、ゆっくりと口を近づけて舐める。 くすぐったさと、舐められるたびに湧き上がってくる自分でも良く知った快感に、沖は自分で掴んでいたシャツを離して口元を押さえた。 「ふーん、結構美味いじゃん」 スポンジの油でべたべたな手と、頬を上気させて涙目で見上げる沖とを見比べ、阿部は心底楽しそうに笑った。 沖は片手を突いて身体を起こすが、肘ががくがくして気を緩めると倒れてしまいそうだった。 「なにすんだよ信じらんない!」 「食べ物は粗末にしちゃいけないんだろ。どうせ無駄にすんなら、二人で楽しく食べた方が良いじゃん」 そう言いつつ、阿部はまたケーキを掴んで今度は沖のズボンに手をかけた。 「だっ、だから、その楽しくの方向性が……!」 今までの経験からなのか、阿部は片手で器用に下着ごと引き摺り下ろした。 どうして今日に限ってジャージを履いてきてしまったのか、沖は剥き出しにされたそこに油っぽい生ぬるい感触が当たるのを見ながらぼんやりと考えた。 「んっ!」 「……文句言う割りには楽しそうなんじゃねえの?」 「ば、ふざけんな!」 馬鹿にしたような言葉に、自分が抵抗すらしていなかったことに気付いて、沖は近づく阿部の顔を手で押し返す。 けれども力のないそれは、払いのけるにはお粗末なものだった。本当は、自分だってもうこの状況を心の底では楽しんでいるというのに。 「まあ、やめろって言われても止めねえけどな」 「……」 「沖、ほら」 崩れたケーキからクリームを人差し指で掬うと、それを沖の口元に持ってくる。 阿部は冷静さを装っているけど目は楽しそうに笑っていて、嫌がりながらも疼きだした欲情を隠せない沖の心の内など既に見透かしているに違いない。 もう逃げられない。そうはっきりと理解すると、目の前に差し出された生クリーム付きの指を咥えた。 言い訳はしない……ケーキプレイと二人のSとMっぷりを書きたかった、それだけ。 文章崩壊してます。 2010.10 |